トリコモナス腸炎とは
「トリコモナス症」と言えば、一般的に人間の場合は「膣トリコモナス原虫(Trichomonas vaginalis)」による、人から人への性感染症(STD)を指します。
通常の性行為によって感染する性感染症で、男女ともに感染しますが、女性の膣炎症状が有名で「トリコモナス膣炎」「膣トリコモナス」と呼ばれることも多い病気です。
「トリコモナス腸炎」とは、大腸にトリコモナス原虫が感染することによって引き起こされる腸炎を指します。
多くは、犬や猫などの動物の腸内にトリコモナス原虫が寄生することによって発症し、下痢などの症状があらわれますが、「膣トリコモナス原虫」とは別の種類となります。
トリコモナス原虫には「膣トリコモナス原虫(Trichomonas vaginalis)」「腸トリコモナス原虫(Trichomonas hominis)」「口腔トリコモナス原虫(Trichomonas tenax)」と3種類あります。
いずれの原虫も、人間に感染して寄生するトリコモナスですが、膣トリコモナス以外は大きな症状が出現するケースは少なく、さほど重大な感染症とはされていません。
「腸トリコモナス」は、犬や猫、インコなど鳥類の腸トリコモナス原虫が寄生して、腸炎となり食欲がなくなったり下痢症状を発症させてしまいます。
ペットの犬や猫は、他の感染している動物の糞便などに接触して口から腸へ感染させるのですが、実は人間にも感染します。
人間がペットの糞便の処理をしたさいにトリコモナス原虫が付着し、食物や食器などに触れたりして経口から大腸へ感染させてしまうパターンが少なくないようです。
大腸へ感染しても人間の場合は、さほど目だった症状がでるわけではなく、腸トリコモナス原虫が寄生しているだけとも言えるのかもしれません。
トリコモナス科の「腸トリコモナス原虫(Pentatorichomonasu hominis)」は、長径8〜20μm、短径3〜14μm(1μm=100万分の1mです)の楕円形。または西洋梨のような形状の寄生虫です。
非衛生的な場所に存在していて、犬や猫などの哺乳類、鳥類、人間の大腸などで繁殖します。
家畜の場合は、家畜伝染病予防法において届出伝染病に指定されています。
腸トリコモナス原虫は、膣トリコモナス原虫とはベツモノなので、ペットなどの動物のトリコモナスから性感染症のトリコモナス膣炎になることはありません。
ペットの猫からトリコモナスを感染してしまった場合でも、大腸に寄生する腸トリコモナスであり、膣に感染して膣トリコモナス症になることは無いのです。
腸トリコモナスに大腸感染しても、もしかすると下痢症状がでる可能性もあのますが、さほど重大な症状はないので問題はないとされています。
ただし、大腸内で寄生虫が増殖するのは、あまり気分のよいものではありません。
ペットの排泄物などの処理のさいには、十分に注意して衛生的に保っておくとか、手洗いを徹底するなどの予防をした方が良いでしょう。